了と过の正しい使い方

 問題 

どの文が「食べる」という動作が発生したということ表しますか?

1a)
Wǒ chīle.
我吃了。
我吃了

1b)
Wǒ chīguo.
我吃过。
我吃过

1c)
Wǒ chīguo le.
我吃过了。
我吃过了

 答え 

三つとも!

“了”も“过”も「発生した」という印象を与える単語ですが、一体どう使い分けるのでしょうか。

前回は Nastya Romanova さんのリクエストで“了”の使い方を説明しましたが、今回はその続きとして“了”と“过”の違いに進めます。“了”は前回のレッスンですでに学びましたので、今回は“过”だけ説明することにします。それから両方の違いを見ていきます。言うまでもなく、“了”と“过”の違いを理解できるように、“了”をまずちゃんと理解しなければなりません。“了”の使い方が分からなければ、前回のレッスンをまずご覧になることをお勧めします。“了”を理解していないままこの動画を見れば、レッスンについていけないかもしれませんので、是非まず“了”のレッスン御覧ください。

“过”の説明に入る前に、簡単に“了”のおさらいから始めます。“了”に二種類あります。

1. 了1と呼ばれる動態助詞

了1は基本的に動詞の直後に置かれ、動作の完了を表します

2. 了2と呼ばれる語気助詞

了2は基本的に文の最後に置かれ、変化を表します

動態助詞“过”

それでは“过”の使い方に入りましょう。この単語には複数の意味がありますが、このレッスンでは“了”と間違えやすい助詞の意味だけを見ます。

まず位置の方から。一番最初の例から分かるように、“过”という助詞は動詞の直後にあります。

動詞    +    “过”

次に“过”の意味を見ます。一つは経験を表し、もう一つは完了を表します。

A. 経験の“过”ー過去の経験を表す

2a)
Wǒ chīguo zòngzi.
我吃过粽子。
我吃过粽子
私はちまきを食べたことがある。

3a)
Wǒ qùguo nà jiā cāntīng.
我去过那家餐厅。
我去过那家餐厅
私はあのレストランに行ったことがある。

続いて、疑問形と否定形の場合を見ましょう。

経験の“过”の疑問形

疑問形は、最後に“吗”をつければ結構です。ほかに何も変わりありません。

2b)
Nǐ chīguo zòngzi ma?
你吃过粽子吗?
你吃过粽子吗
あなたはちまきを食べたことがあるか?

3b)
Nǐ qùguo nà jiā cāntīng ma?
你去过那家餐厅吗?
你去过那家餐厅吗
あなたはあのレストランに行ったことがあるか?

経験の“过”の否定形

否定形の場合は、動詞の前に“没”をつけます。疑問形と同じように、そのほかに変わるところがありません。

2c)
Wǒ méi chīguo zòngzi.
我没吃过粽子。
我没吃过粽子
私はちまきを食べたことがない。

3c)
Wǒ méi qùguo nà jiā cāntīng.
我没去过那家餐厅。
我没去过那家餐厅
私はあのレストランに行ったことがない。

ものすごく簡単でしょう。では二つ目の意味を見ます。

B. 完了の“过”——動作の完了を表す

4a)
Wǒ chīguo zòngzi le.
我吃过粽子了。
我吃过粽子了
私はちまきをもう食べた。

5a)
Wǒ qùguo nà jiā cāntīng le.
我去过那家餐厅了。
我去过那家餐厅了
私はあのレストランにもう行った。

経験の“过”の例とほぼ同じですが、今度の文の最後に“了”がついているのにお気づきになりましたか。後ほど戻ってより細かく説明しますが、まず完了を表す“过”の疑問形と否定形を見ましょう。

完了の“过”の疑問形

疑問形の場合は先程の経験を表す“过”と同じく簡単で、最後に“吗”をつけるだけです。

4b)
Nǐ chīguo zòngzi le ma?
你吃过粽子了吗?
你吃过粽子了吗
あなたはちまきをもう食べたか?

5b)
Nǐ qùguo nà jiā cāntīng le ma?
你去过那家餐厅了吗?
你去过那家餐厅了吗
あなたはあのレストランにもう行ったか?

完了の“过”の否定形

否定形は、経験を表す“过”の場合と同じように、動詞の前に“没”を入れますが、今度は“过”自体、そして最後の“了”が落とされます。

4c)
Wǒ méi chī zòngzi.
我没吃粽子。
我没吃粽子
私はちまきを食べなかった。

5c)
Wǒ méi qù nà jiā cāntīng.
我没去那家餐厅。
我没去那家餐厅
私はあのレストランに行かなかった。

実は、完了の“过”の否定形に、“还” hái(まだ)がよく付きます。

4d)
Wǒ hái méi chī zòngzi.
我还没吃粽子。
我还没吃粽子
私はまだちまきを食べていない。

5d)
Wǒ hái méi qù nà jiā cāntīng.
我还没去那家餐厅。
我还没去那家餐厅
私はあのレストランにまだ行っていない。

これについて後ほど説明しますが、今はまず“过”の二つの意味を考えてみましょう。

経験の“过” vs 完了の“过”

もう一度それぞれの一つ目の例文を見ましょう。

2a)
Wǒ chīguo zòngzi.
我吃过粽子。
我吃过粽子
私はちまきを食べたことがある。

4a)
Wǒ chīguo zòngzi le.
我吃过粽子了。
我吃过粽子了
私はちまきをもう食べた。

この二つの文の違いは、4a の最後に“了”がついてあることです。では質問です。これは“了1”なのか、“了2”なのか?そうですね、文の最後に来るので“了2”です。完了の“过”はよく“了2”と一緒に使われるのです。“了2”が付いていれば、経験の“过”ではなく、完了の“过”である場合が多いです。ただし、これはいつもそうだというわけでもないので気をつけましょう。

前回のレッスンをご覧になったら、4a の構造は見たことがあるような気がしませんか?前回のレッスンの次のこの例を見ましょう。

Wǒ chīle fàn le.
我吃了饭了。
我吃了饭了
私はご飯を(もう)食べた。

これは、4a の例にすごく似ているでしょう。目的語の“饭”を“粽子”に、助詞の“了”を“过”にすれば、まさに 4a “我吃过粽子了”そのものです。

完了の“过”は“了1”にかなり近いということがお分かりになったと思います。“了1”と同じように、動詞の直後に置かれ、また、“了1”と同じように、完了を表します。(“了2”に似ているのではないのでご注意ください。)前回のレッスンで習ったように、4a の最後の“了2”も動詞の“吃”の完了を確認し、新しい状況を示す働きをします。それから“了2”は「もう〜」と訳される場合が多いというのを覚えていますか。4a の“了2”もそのように訳されます。動作がすでに完了されたということを強調するのです。

では 4a の“过”を“了1”に変えてもいいでしょうか。まったく問題ありません。そうすれば次の文になります。

4aa)
Wǒ chīle zòngzi le.
我吃了粽子了。
我吃了粽子了
私はちまきをもう食べた。

さて 2a の“我吃过粽子”と 4a の“我吃过粽子了”の違いは?前も言ったように、2a は経験を示し、4a は完了を示します。前者は「したことがある」で、後者は「もうした」という具合です。結構シンプルですよね。ちょっと余計な説明に聞こえるかもしれませんが、念の為しておいたほうがいいと思うのでもう少し細かく説明させていただきます。

以前のある時にやったことがあることなら、2a の“我吃过粽子”です。今までの経験を挙げて、“我吃过粽子”という項目にチェックマークを付けるとイメージすればいいでしょう。その一方、4a の場合は、端午の節句に、友達を訪ねるとしましょう。すると友達がちまきを勧めてくれます。そんな場合、“我吃过粽子了”と言って、端午の節句に食べるちまきの量はもう満たされ、これ以上はもう食べたくないたという意味です。

“了2”の働き

最後に付く“了2”をもう少し深く見ましょう。動詞“吃”の完了を確認し、これは今の新しい状況だということを示す働きをします。つまり、2a の“我吃过粽子”は過去のある時点の経験を言うのに対し、4a の“我吃过粽子了”では“了2”が変化を表し、新しい状況を示すので、今この瞬間に重点が置かれます。

“了2”があるから 4a の“我吃过粽子了”の“过”は経験よりも、完了を表すと今習いましたが、いつもそうだというわけでもないと先程言いました。それはどういうことでしょうか。

まず、“了2”があれば必ずしも完了の“过”であるとは限らず、経験の“过”の可能性もあります。

つい先程見た“了2”の性質を考えてみましょう。新しい状況を示す働きがあるというのであれば、4a の“我吃过粽子了”という文には、「私はちまきをもう食べた」という完了を表す意味の他にも、「私は今やっとちまきを食べたことがあるようになった」という経験を表す意味もあるのではないでしょうか。ずっとちまきを食べてみたかったですが、やっと今食べた、という具合です。ようやく、“我吃过粽子”の経験にチェックマークを付けることができるようになりました。或いは、単なる「私はちまきをもう食べたことがある」という意味にもなります。例えば、レストランで何を食べるか悩んでいるとしましょう。友達がちまきはどうと勧めます。でもちまきは前にもう食べたことがあるから、今日はほかのものを食べたいです。そんな場合、“我吃过粽子了”と言うとぴったりでしょう。

また、完了の“过”の文には、“了2”が必ず付くとは限りません。次の文を見ましょう。

6a)
Wǒ chīguo zòngzi jiù qù.
我吃过粽子就去。
我吃过粽子就去
私はちまきを食べてから行く。

この場合、一つ目の動作“吃”が終わったら二つ目の動作“去”を行います。“过”がここでも完了を表しますが、動作が実際発生していないので“了2”がありません。この文も見たことがあるような気がしませんか。前回のレッスンの“了1”の次のこの文に似ているのです。

Wǒ chīle fàn jiù qù shàngbān.
我吃了饭就去上班。
我吃了饭就去上班
私はご飯を食べてから出勤する。

“过”と“了1”はなんて類似したところが多いでしょう!

完了の“过”を深堀り

完了の“过”をもう少し深く見ましょう。少し脱線してしまいますが、もう一つすごく似ている例文を見ていただきたいのです。

7a)
Wǒ chīwán zòngzi le.
我吃完粽子了。
我吃了就去上班
私はちまきを食べ終わった。

この例では、結果補語の“完”が使われます。完了の“过”は結果補語だと見なす人もいるほど、使い方が結果補語にとても近いです。意味の近い例をどんどん挙げて混乱させるつもりはありません。似ている例を比較することによって、“过”の性質をより明確に理解していただきたいと思っているのです。ではさっそく比較してみましょう。

4a)
Wǒ chīguo zòngzi le.
我吃过粽子了。
我吃过粽子了
私はちまきをもう食べた。

4aa)
Wǒ chīle zòngzi le.
我吃了粽子了。
我吃了粽子了
私はちまきをもう食べた。

7a)
Wǒ chīwán zòngzi le.
我吃完粽子了。
我吃完粽子了
私はちまきを食べ終わった。

三つの中では 7a が一番目立つでしょう。結果補語の“完”の焦点は「終わる」ことです。

一方、4a の“过”の場合は「すでに発生した」「経歴した」ということです。“过”の動詞としてのもともとの意味は「通る」「通過する」なので、助詞の場合も、そのもとの意味が残っているでしょう。

“完”と“过”に対して、4aa の“了1”はそれほど特色はありません。

“过”の感覚少し身に付きましたか?では先程の否定文に戻りましょう。

完了の“过”の否定形に戻る

4d)
Wǒ hái méi chī zòngzi.
我还没吃粽子。
我还没吃粽子
私はまだちまきを食べていない。

5d)
Wǒ hái méi qù nà jiā cāntīng.
我还没去那家餐厅。
我还没去那家餐厅
私はあのレストランにまだ行っていない。

二つのポイントに注目したいです。

一つ目は、否定文では、経験の“过”の場合、“过”はそのまま残りますが、完了の“过”の場合、落とされます。これはまた“了1”と同じところでしょう。前回のレッスンで習ったように、“了1”を否定するとき、“了1”自体が落とされます。

二つ目のポイントは、完了の“过”を否定するとき、その前に“还”がよく付くのはなぜでしょうか。その疑問文を見ると明白になると思います。

4b)
Nǐ chīguo zòngzi le ma?
你吃过粽子了吗?
你吃过粽子了吗
あなたはちまきをもう食べたか?

5b)
Nǐ qùguo nà jiā cāntīng le ma?
你去过那家餐厅了吗?
你去过那家餐厅了吗
あなたはあのレストランにもう行ったか?

完了の“过”は完了を強調するのです。「もうしましたか」という疑問に対して、「まだです」と返答するのももっともでしょう。

 まとめ① 

では二つの“过”の使い方をまとめましょう。

  1. 完了の“过”には一般、後ろに“了2”が付くのに対して、経験の“过”には一般ありません
  2. 否定文では、経験の“过”はそのまま残りますが、完了の“过”はなくなります
  3. 経験の“过”は以前のある時点に経歴した事実を表すのに対して、完了の“过”の場合は、最後に付いてある“了2”が現在このような状況になったということを表します

ほとんどの場合このように区別することができますが、たまには経験の“过”なのか完了の“过”なのか見分けにくい場合もあります。次の会話を見てみましょう。

8)
A)
Huáng Fēihóng kànguo ma? Méi kànguo de huà míngtiān kàn ba.
《黄飞鸿》看过吗?没看过的话明天看吧。
黄飞鸿看过吗
《黄飞鸿》は見たことがある?見たことがなければ明日見よう。

B)
Kànguo, bùguò kěyǐ zài kàn.
看过,不过可以再看。
看过不过可以再看
見たことがあるが、もう一度見てもかまわない。

A)
Kànguo le hái kàn?
看过了还看?
看过了还看
もう見たのにまた見るの?

ご覧の通り、Aの“看过”に対してBは同じ“看过”で返答しますが、そのBの返答に今度Aは“看过了”と言い、ニュアンス的には「見る経験がある」よりも「見ることを済ませた」でしょう。つまり、“看过”は、単なる見たことがあるという経験を事実として述べているのに対して、“看过了”は、すでに見ることを済ませて、その動作がもう終了したのでもう一度する必要がないという意味合いが裏にある場合が多いでしょう。では、それぞれ逆にすることはできるでしょうか。はい、できますよ。そうするとニュアンスも逆になります。

色々言いながらも、これでくよくよしないでください。今の会話でお分かりでしょうが、二つの“过”の違いが本当につまらないくらいほんの少しだけの場合もあるのです。動詞としての「通り」というもとの意味を考えてみれば、経験の“过”と完了の“过”は、意味的には確かに重なるでしょう。それよりも、そもそも二つに分かれていないとでも言うべきでしょうか。

ではこのレッスンの議題に戻りましょう。“了”と“过”の違いは?ここまでご覧になってお気づきでしょうが、“了”と“过”をうまく使うために、或いはうまく使い分けるために、この二つの助詞の間にどんな違いがあるかを見つけるよりも、それぞれを理解し、どの“了”なのか、どの“过”なのか、判断できる能力を養うことのほうが肝心ではないでしょう。“了”と“过”がごちゃになるのは、それぞれに意味と使い方がたくさんあってちゃんと理解できていないからです。

 まとめ② 

ここまで見てきた“了”と“过”をまとめてみましょう。

  1. 完了の“过”は“了1”にとても近いです
  2. 完了の“过”はよく変化を表す“了2”と一緒に使われ、「もう〜」と訳される場合が多いです
  3. “了1”に比べれば、完了の“过”のほうが「完了」の意味合いが強いです

では一番最初の例に戻りましょう。

1a)
Wǒ chīle.
我吃了。
我吃了

1b)
Wǒ chīguo.
我吃过。
我吃过

1c)
Wǒ chīguo le.
我吃过了。
我吃过了

まず1a と 1c の“了”はどの“了”なのか確かめましょう。

前回のレッスンで習いましたが、1c の“我吃了”の“了”は、完了を表す“了1”でもあり、変化を表す“了2”でもあります。

そして 1c の“我吃过了”の“了”は変化を表す“了2”です。

続いて、1b と 1c の“过”を見ましょう。1b は経験を表し、1c は完了を表します。

つまり、三つも文とも発生したことですが、意味的には、1a の“我吃了”の場合、“了”が“了1”と“了2”の両方の働きをするため、1c の“我吃过了”とかなり似ているのです(“我吃过了”の“过”が“了1”に似ていて、“了”が“了2”である)。それに反して、1b の“我吃过”は単に以前に食べる経験があったということを述べているだけです。

この三つの文が含む短い会話を二つ見ましょう。

9)
A)
Yí, zhè shì shénme?
咦,这是什么?
咦这是什么
おや、これはなに?

B)
À, zhè jiào lóngyǎn. Hěn hǎochī, wǒ chīguo.
啊,这叫龙眼。很好吃,我吃过。
啊这叫龙眼
あ、これは竜眼という。美味しいよ。私は食べたことがある。

10)
A)
Wǒmen zhèng yào chī fàn ne, yīqǐ chī ba
我们正要吃饭呢,一起吃吧!
我们正要吃饭呢
私達はちょうど食べるところだ。一緒に食べよう。

B)
Wǒ chīle./ Wǒ chīguo le. Nǐmen mànmàn chī.
我吃了。/ 我吃过了。你们慢慢吃。
你们慢慢吃
私はもう食べた。どうぞごゆっくり。

“了”と“过”についての理解が深まりましたか?すぐに完璧に使いこなせる助詞ではないので、まだ完全に分かっていなくても構わないでしょう。少し時間をおいてもう一度ご覧になれば効果的だと思いますよ。加油 jiāyóu!


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