外国人ですが外人ではない——中国語の“外人”について

京都にいた頃、アルバイトをしていました。マネージャーさんが七十歳の方で、私のことを「外人です」とバイトの子たちに言いました。

私はハッとしました。「外人」という言葉は差別用語だと思う人も思わない人もいると今分かりましたが、差別用語だと教わったので、軽いショックでした。また、当時私の「外人」に対するイメージは「西洋人」でした。まさか外見が日本人とそれほど変わらない黄色人種の私にも当てはまると思わなかったです。そうか…目から鱗が落ちるような気がしました。

正式に私を紹介したのではなく、みんなの働きぶりを見ながら何気なく言ったのです。まぁ、悪気はきっとないでしょうと自分に言い聞かせました。西洋人であれアジア人であれ、とにかく日本人ではないというのは事実なので、「外人」だと認めるしかなかったのです。しかも、そのマネージャーさんの京都弁が半分しか理解できなかったのです。ある日、「この子は日本語が分からないんです」と誰かに言ったのが聞こえました。なるほど…二度目のショック。日本語さえ分からないので、間違えなく「外人」ですよね。

ショックと言っても実はすごく面白くて楽しい思い出になったのです。もちろんこの記事では文句を言うつもりもないし、また日本語の「外人」は差別用語かどうかということを論議したくもありません。中国語の“外人” wàirén の意味合いについて話したいのです。

少し前に、ある西洋の方が中国語で私に自己紹介をするとき、“我是外人” wǒ shì wàirén(私は「外人」です)と言いました。あ、“外国人” wàiguórén と間違えているのねと思って直してあげました。仕事で外国の方が単語を間違えるのをよく聞いているのでおかしく思うはずはないですが、さすがこの“外人”という言葉になるとちょっと気になりました。そして日本での経験を思い出しました。

さて、中国語の“外人” wàirén は“外国人” wàiguórén と同じでしょうか?

waiguorenwairen

念のため辞書を引いてみたら、なんとこれが載っていました:

1. 何の縁もない人.他人
2. 部外者.外部の人
3. 外国人.外人
(講談社中日辞典第二版)
そうか、“外人” wàirén は“外国人” wàiguórén という意味にもなるのか。まぁ、少なくとも辞書によればね…

例の西洋人はただミスをしたのか、それとも日本語が分かってそのまま中国語にしたのか、またそれとも辞書でその意味を確認してから使ったのかよく分かりませんが、やはり“外人” wàirén の代わりに“外国人” wàiguórén で自己紹介してほしいです。

なぜなら、辞書の定義にも関わらず、一般、“外人” wàirén といえば最初の二つの意味で捉えられるのです。よその人、身内ではない、他人、仲間ではない、また望ましくない場合、信頼できない人という意味合いもあります。その単語自身は否定的な意味はないと思いますが、普通“外人”とされたくはないでしょう。これを想像してみましょう。あなたは子供で、ほかの何人かの子供が楽しそうに遊んでいるのを見かけます。手をつないで輪になってます。一緒に遊びたくて近寄ってみると、嫌だと何人かの子達が騒ぎ出します。結果としてリーダー役の子があなたを押し出します。ちょっと大げさかもしれませんが、“外人” wàirén って、私がイメージするとそんな感じかなと思います。

恐らく、日本語の「外人」は差別用語だと納得したのも、中国語の感覚で解釈してしまったのかもしれません。

では、中国語の“外人” wàirén の例を幾つか見ましょう。

Zhè shǐ wǒmen jiāshì, nǐ zěnme néng gēn wàirén shuō ne?
这是我们家事,你怎么能跟外人说呢?
家族のことなのに、なんで他人に言っちゃたの?

Tā bú shì wàirén, yǒu huà kěyǐ dāngzhe tā de miàn shuō.
他不是外人,有话可以当着他的面说。
彼は他人ではないので、話があれば彼の前で言ったら結構です。

Zěnme zhème kèqi, nǐ dāng wǒ shì wàirén ma?
怎么这么客气,你当我是外人吗?
なんでこんなによそよそしいの?私を他人だと思っているの?

Gēn tāmen zài yìqǐ, zǒng juéde zìjǐ shì wàirén.
跟他们在一起,总觉得自己是外人。
彼らと一緒にいるといつも自分は他人だと感じる。

必ずネガティブになるというわけでもないです。

例えば、ある会社の社員ではなければ、当然その会社の業務に干渉してはいけないでしょう。そんな場合、“外人”であるのは当然です。

Nǐmen gōngsī de shìqing, wǒ zhè ge wàirén bù yīnggāi gānshè.
你们公司的事情,我这个外人不应该干涉。
貴社のことによその者である私は干渉してはいけません。

その他の例も見ましょう。

Sīrén zhùzhái, wàirén bùdé rù nèi.
私人住宅,外人不得入内。
私有地につき部外者立ち入り禁止。

Tāmen jǐ ge zǒngshi xīxīhāhā, zài wàirén kànlai, shì duōme kuàilè héxié de yí ge tuánduì.
他们几个总是嘻嘻哈哈,在外人看来,是多么快乐和谐的一个团队。
彼らはいつも笑い興じています。よその人から見るとなんと仲むつまじいグループでしょう。

Tāmen fūqī zhījiān de shì, lúnbudào wǒmen wàirén chāshǒu.
这是他们夫妻之间的事,轮不到我们外人插手。
これは彼ら夫婦の間のことなので、他人の私たちが手を出すべきではないです。

確かに、外国人と言えば自分の国以外の人なので、他人でしょう。

“外国人” wàiguórén と言っても“外人” wàirén と言っても違いはあまりない場合もあるというのは否定できないです。例えば、

Wǒmen guójiā de shì, wàirén (wàiguórén) yòu zěnme néng lǐjiě ne?
我们国家的事,外人(外国人)又怎么能理解呢?
我が国の事情は外人には理解できるはずはないでしょう。

それにもかかわらず、普段、本人の前で、或いは本人に対して直接“你是外人” Nǐ shì wàirén/ “他是外人” Tā shì wàirén (あなたは外人です・彼は外人です)などと言わないでしょう。また自己紹介するときももちろん言いません。

次のシナリオを想像しました。

人物は小黄、小林とジョンさんです。

Xiǎo Huáng: Xiǎo Lín, zhè shì wǒ péngyou, tā jiào John, tā shì wàirén.
小黄:小林,这是我朋友,他叫John。他是外人。
黄ちゃん:林ちゃん、こちらは私の友達のジョンです。“外人” wàirén です。
Xiǎo Lín: Á?
小林:啊??
林ちゃん:へぇ?

この会話での“外人” wàirén は「他人」に聞こえてしまうので、突拍子もない会話になるのです。ひょっとしたら林ちゃんは今まで上の空で話を聞いているので黄ちゃんは変な話で起こしてあげたいのかもしれません。(もちろん、一般“外国人” wàiguórén よりも具体的どの国の方かはっきり紹介するでしょう。)

喜んで“外人” wàirén になりたい可能性は一つあると思います。厄介なことが起きて巻き込まれたくないときです。

Wǒ shì wàirén, nǐmen de shìqing wǒ jiù bù gānshè le.
我是外人,你们的事情我就不干涉了。
私は他人なので、あなたたちのことに干渉するのを遠慮します。

ちなみに、“外人” wàirén の反対は“自己人” zìjǐrén です。

Zhèli méi yǒu wàirén, dàjiā dōu shì zìjǐrén, yǒu huà zhí shuō.
这里没有外人,大家都是自己人,有话直说。
ここに他人がいなくて、みんな身内なので、何か話があれば直接言ってください。

次の文でこの記事を終わらせたいです。大山 Dàshān という中国語がめちゃくちゃペラペラなカナダの方に対する多くの中国人が与える評価です。

Tā shì wàiguórén, dàn bú shì wàirén.
他是外国人,但不是外人。
彼は外国人ですが、他人ではないです。

なんと素敵な評価でしょう!次は大山さんが演じた相声 xiàngsheng(漫才)です。あれほど中国語が上手なら、“外人” wàirén だとなかなか思えないでしょう。

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