中国人の我爱你

今年のバレンタインはダブルバレンタインであることをご存知でしょうか。

春節は15日目の元宵節(元宵节 Yuánxiāo Jié)に終わります。15日は灯節(灯节 Dēng Jié)ともいい、昔のバレンタインだと言われています。なぜなら、昔の女性はあまり外出できなかったが、この日には灯節に行くことができ、男性と会えたのです。この元宵節は今年、新暦の2月14日にあたり、西洋のバレンタインとちょうど同じ日になります。予想通り、シンガポールではこの日、結婚するカップルが普段よりずいぶん多いです。(新聞記事

さて今日のトピックは元宵節ではなく、中国人の「愛」についてです。中国語で「私はあなたを愛しています」ってどう言うのですかとよく外国の方に聞かれます。答えはとても簡単で、”我爱你”(wǒ ài nǐ)です。しかし、中国人はどれくらいこの表現を使っているのでしょうか。

ラブソングを聴くと、歌詞に“我爱你”はよく出ています。例えば

《小薇》(Xiǎowēi)

この歌の一番最初に男たちが“我爱你”と叫んでいます。歌の中、“你可知道我多爱你”(Nǐ kě zhīdao wǒ duō ài nǐ 私があなたをどれくらい愛しているのか知っているか)もあります。

《约定》(Yuēdìng)
http://www.youtube.com/watch?v=h6tocDT-qqY 最後のところ、”我会好好地爱你 傻傻爱你”(Wǒ huì hǎohao de ài nǐ, shǎshǎ ài nǐ あなたをちゃんと愛します、思い切り愛します)との約束。

《你怎么舍得我难过》(Nǐ zěnme shěde wǒ nánguò)

“最爱你的人是我,你怎么舍得我难过”(Zuì ài nǐ de rén shì wǒ, nǐ zěnme shěde wǒ nánguò あなたを一番愛しているのは私なのに、どうして私が悲しんでいても平気なの)と悲しく言っています。

《爱你爱你》(Ài nǐ ài nǐ)

これは最近の曲で、思い切り”爱你”をタイトルにしています。

歌は人々の心を表しているものなので、歌によく出ているなら実際に使われていると思いがちですが、そうでもないようです。少なくとも伝統的な中国人なら、感情をそのまま出すのが苦手です。気持ちを完全に言い切るのは良くないという考え方があり、「含蓄」(hánxù)は美徳だと思い、婉曲表現を好のです。”我爱你”は、西洋からの輸入品です。恋人同士は西洋人のように言わないし、家族はなおさら言いません。感情を表に出しすぎると、”肉麻”(ròumá 歯が浮きそう)と思われるかもしれません。

爱、喜欢、疼

“爱”のほかに”喜欢”(xǐhuan)と”疼”(téng)も知っておけばいいと思います。そもそも、”爱”はかなり偉大な感情とされていて、軽くは言えないものです。簡単に言う人は、信頼できない人だと思われるかもしれません。たとえ率直に恋人に気持ちを伝えたいにしても、”我喜欢你”(Wǒ xǐhuan nǐ あなたのことが好きです)の方が普通でしょう。しかし、もっともよく使われているのはおそらく”疼”でしょう。”疼”は可愛がるという意味で、子供にも、恋人にも使えます。基本的に、自分より年下、または世話してあげられる人に対して使います。親は子供を”疼”します。先生は生徒を“疼”します。彼氏は彼女を”疼”します。また、自分を”疼”してくれる旦那を見つけるのは幸せへの道とされています。しかし最近、女性は強くなってきて、”疼”されたくない女性も増えているのではないかと思います。(中学校のころ、ある女の子が将来の旦那に”疼”されたくないわと言っていたのを覚えています。そのときの私にはまったく理解できませんでした。)

《爱你在心口难开》(Ài nǐ zài xīn kǒu nán kāi)
http://www.youtube.com/watch?v=oU6SIAEiobc この歌の題名《爱你在心口难开》(心の中で愛しているのに口には出せない)が表しているように、一般、”愛”は口になかなか出せないのです。そもそも、言葉にする必要がないと思われるのです。直接言葉で伝えるよりも、行動で表すのが多いです。もちろん、行動とは、キスなどではありません。些細なことに気を配ったり、まめまめしく世話をしてあげたりするのです。また、変に聞こえるかもしれませんが、やきもちをやくことで表します。言葉にするならば、”我爱你”の代わりに、”我关心你”や”我担心你”(Wǒ guānxīn nǐ/ Wǒ dānxīn nǐ あなたのことを心配しています)のほうが自然に聞こえます。ただし、”我关心你”と”我担心你”は男女関係に限らず、友達同士にもよく使われますので、曖昧になるときもあるでしょう。もしもっとはっきり言いたいならば、次のような表現があります。

Wǒ duì nǐ shì zhēnxīn de
我对你是真心的。
あなたへの気持ちは本当です。

Nǐ zhīdao wǒ zuì téng nǐ de
你知道我最疼你的。
私はあなたを一番可愛がっているのを、知っているはずでしょ。

Wǒ zàihu nǐ
我在乎你。
あなたのこと気になっています。

Wǒ de xīnyì nǐ hái bù dǒng ma
我的心意你还不懂吗?
私の気持ちいまだに分かっていないの?

Wǒ hěn xiǎng nǐ
我很想你。
あなたを想っています。会えなくて寂しいです。

Wǒ xīnli zhǐ yǒu nǐ
我心里只有你。
私の心の中にあなたしかいません。

Wǒ zhǐ duì nǐ hǎo
我只对你好。
あなたにだけ優しくします。

Nǐ duì wǒ zuì hǎo le
你对我最好了。
あなたが一番私に優しくしてくれるの。

Nǐ chīcù le ma
你吃醋了吗?
やきもちやいているの?

Wǒ yào yíbèizi bǎohù/ zhàogu nǐ
我要一辈子保护/照顾你。
一生守ってあげます。

Xià bèizi wǒ yě yào gēn nǐ zài yìqǐ
下辈子我也要跟你在一起。
来世も必ず一緒にいたい。

ところが、近頃の中国のドラマを見ていたら、なんと時代劇にも”你爱我吗(Nǐ ài wǒ ma あなたは私を愛していますか)、”我很爱他”(Wǒ hěn ài tā 私は彼を愛しています)などのようなセリフがかなり多いことに気づきました。現代人であり、しかも西洋文化に小さい頃から接してきたシンガポール育ちの私でも聞いたら照れてしまうのですが…年のせいなのかしら。若い世代の子達は違和感なく言えるのかもしれないな…と思ってしまいます。シンガポールでは、中国語の”我爱你”はあまり耳にしませんが、英語で言う人は少なくないように思います。

さて親子の場合はどうでしょう。この記事によると、最近、親に「我爱你」を言う実験が行われました。若い子たちは親に電話を掛けて「我爱你」を言ってみると、喜んだ親もいましたが、ほとんどの親は、「あなた酔っ払っているの」、「何か大変なことが起こったの」、「お金欲しいの」、などと反応に困ったらしいです。おかしい一方でやはり見ると気持ちぽかぽかです:
http://www.youtube.com/watch?v=HS1rEO4FjpQ

終わる前にもう一つ面白い現象をシェアーしたいです。あくまでも私自身のことですが、私に限らず英語圏育ちの中華系の方々にも似たような気持ちを感じているのではないかと思います。私は、中国語で”我爱你”は言えませんが、英語で家族や親友にメールなどを送るときに、なぜかよく”love”で終わります。また、これは本当にたまにだけですが、”love you lots”と書いてしまうときもあります。英語モードに完全に入ったら、素直になれるのかしら。英語でも「口」に出すのは無理ですが、「筆」に任せることは少しはできているようです。

中国人の感情の表し方は、日本人と似たところや違ったところありますか。面白い経験やお話があれば是非聞かせてください。

それではまた次回に。ハッピーバレンタイン!そして、元宵节快乐(Yuánxiāo Jié kuàilè)!

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